10,210 STILL ALIVE

(10,211 に書いてる。)

行くつもりはなかった。そういうとなんだか嘘っぽいけれど、本当で。長男から「チケットあるよ。」と教えてもらっていたけど「今回はやめとく!」と答えた。自分には「お金を使う」ということ以外でやれることがあると思っていたし、アリーを迎えに行く時の小旅行のために残しておきたいなという気持ちもあったから。でも、

次男

多分3人でいけるのは今後なかなかない気がするのでいきたい

このLINEを見て「行こう。」と即答した。

ぼくたちは男3兄弟で、ぼくが末っ子。本当にいろんなことを抱える3兄弟。

病気がちで自由人な末っ子に、大きな優しさをもって家業を継ぐ次男に、半身不随で努力家な長男。ここ数年のあいだに、家族のかたちが少しずつ変わっていったし、それぞれに抱えるもの、向き合っているものが変わっていった。その道の中で心に溜まってきていたいくつもの欠けらは、忘れていても、胸の内にあった。

次男の言葉を受けたとき、すぐに行くと決めた。何にも変え難いものを感じたから。

  • 贅沢をしていない風でいて、ライブは行くのかお前。
  • 8月にお休みをするくせに、お店休んでライブに行くのかお前。
  • そんなに売上たってるわけじゃないだろ、なんかやることあんだろお前。

そういうことを思わないわけじゃない。現にこうして文字に起こせるわけだから、そういう見方があるのも理解してる。でも、この1日のことを言えば「そういう話じゃない。素敵な家族をもった自分を誇らしくも思うし、幸せだと思うし、何にも変えがたいものを見に行くんだな。」と、そんなことを思ったんだ。

ap bank fes’23

はじまりの3曲で、もう溢れてきた。たくさんの記憶、感情が、溢れてきた。兄のトイレに連れ添って自分のシートまで戻り歩く中で、ぼくは口をぎゅっとした。少しひんやりと、頬をつたい、ぼくはそれを拭った。

よく来たね。
大変だったんじゃない。
遠方まで疲れちゃったんじゃない?
こんなにいいお天気だから
今年もいっぱい遊ぼう。

bank band / よく来たね。

その言葉一つひとつが、胸をうつ。

本当に大変な日々だった。本当にいろんなことがあった。前にきたap bank fes’18のとき、ぼくは右手首を骨折していたけれど、それでも来た記憶。蘇るものがあった。今があるのも、そういうことなんだろうなと思った。

それからは、ただただぼうっと流れるままに、終わりまでを眺めているようだった。最後の花火があがって、それにただただ見惚れた。美しく儚い、決してつかまえることのできないものが、空に映って、夜の空を照らした。

本当に美しい1日だった。

ありがとう。

今日も素敵な1日をー。